広島県公立大学法人 叡啓大学

2026.11.02

【開催報告】「 AI時代における企業の価値創造戦略 ─『地方』から見えてくる事業開発と人材開発の未来」

叡啓大学(学長:有信睦弘、所在地:広島市中区)ソーシャルデザインセンター(SDC)は、2026年10月6日(火)、東京・神楽座において、広島県の後援、角川アスキー総合研究所とMITテクノロジーレビュー[日本版]の協力のもと、特別イベント「AI時代における企業の価値創造戦略 ──『地方』から見えてくる事業開発と人材開発の未来」を開催しました。

当日は80名を超える参加者が来場し、AI時代における企業の成長戦略や人材活用のあり方、地方の可能性について活発な議論が行われました。

基調講演「AIエージェント時代の企業と人材」

基調講演では、『ホワイトカラー消滅』『日本経済AI成長戦略』の著者である経営共創基盤(IGPI)グループ会長・日本共創プラットフォーム(JPiX)代表取締役会長の冨山和彦氏が登壇し、AIの普及による企業経営や働き方の変化について講演しました。

冨山氏は、生成AIの進展によってホワイトカラー業務の多くが変化していくとの見方を示すとともに、今後はAIを活用して意思決定を行う「ボス」と、現場のエキスパートへと仕事が分化していくと説明しました。人口減少や人手不足が進む日本においては、生産性向上がますます重要になると指摘するとともに、AIの普及により地方の中堅・中小企業でも高度な知的生産活動を活用できるようになり、地方企業にとってもAI活用による新たな成長機会が広がる可能性について語りました。

パネルディスカッション「東京から地方へ、実践者たちのリアル」

パネルディスカッションでは、リクルートから広島銀行へ移り、2024年にひろぎんホールディングス初の女性執行役員に就任した木下麻子氏、サイボウズ副社長などを経て2015年に常石グループへ移った常石商事代表取締役副社長執行役員の津幡靖久氏、角川アスキー総合研究所代表取締役社長の垣貫真和氏、NECから叡啓大学へ転じた早田吉伸教授(ソーシャルデザインセンター長)が登壇し、地方で働く実践者の立場から意見を交わしました。

木下氏は、広島での仕事について「手触り感のあるマーケットで、自分たちが動きながら意思決定して地域を作っている実感がある」と語りました。また、地方には「手触り感とスケール感のある仕事の席」があると述べました。

津幡氏は、AIの普及によって地方企業に新たな可能性が生まれる一方で、「AIに頼り切った組織を作ってしまうと、ミニボスを育成するチャンスを失う」と指摘しました。

早田教授は、AIによってデータ化された情報がコモディティ化する時代には、一次情報や社会実装に価値が移るとした上で、地方はAI時代に価値が残る社会実装の「実験場」になり得るとの考えを示しました。

叡啓大学ソーシャルデザインセンターの取組紹介

パネルディスカッション後には、早田教授から、企業・行政・大学の共創を推進する叡啓大学ソーシャルデザインセンター(SDC)の取組が紹介されました。

SDCでは、企業と学生が新規事業創出に取り組む「共創プログラム」や、首都圏企業等の人材が広島を拠点に地域企業の新規事業やDXに取り組む「ひろしまバリューシフトプログラム」を展開しています。こうした取組を通じて、人材育成と地域での価値創造を推進していることが紹介されました。

閉会挨拶

閉会の挨拶では、垣貫真和氏(角川アスキー総合研究所代表取締役社長)が登壇し、「地方にこそ、やるべき仕事がある」と述べました。また、「AIで浮いた人と組織の力をどこでどう使うのか、その答えの一つの形が今日ここで示された」と総括しました。さらに、冨山氏が提唱した「ボスとミニボス」への組織転換や、首都圏人材の再配置、大学をハブに企業・行政・人材をつなぐ叡啓大学の共創の仕組みについて触れ、「広島という一つの都市で同時に試せるようになりつつある」と述べました。

本イベントでは、AIの進展が企業や人材に与える影響に加え、地方が新たな価値創造や社会実装の場として果たす役割について多角的な議論が交わされました。参加者にとって、AI時代における企業の成長戦略や人材活用、地域との関わり方について考える機会となりました。