2026年6月26日(金)、叡啓大学で「ポスト都市時代の社会デザイン—社会実装都市ひろしま―」出版記念イベントを開催しました。これは5月29日(金)に出版された特別編集ムック本を記念するイベントで、登壇者や招待者、メディア関係者を含めて約100名が、大学キャンパス最上階の叡啓トップに集まりました。

社会システムの大転換期が到来。価値が生み出される場所が変わる
なぜ今、このような本が出版されたのか。イベントでは最初に、叡啓大学ソーシャルデザインセンター(SDC)の早田吉伸センター長(教授)が、本を出版した背景や今後への思いを語りました。
「社会システムの大転換期が到来しています。AI時代には価値を生み出すプロセスが変わり、価値が生み出される場所が変わります。日本の縮図としての多様性を持つ広島は、その価値の中心になるポテンシャルを持っています。広島から世界へ、さまざまなステークホルダーの皆さんと一緒に新しい人づくりがしたい、広島を挑戦する人が育つ社会実装都市にしていきたい、と考えています」と口調に熱がこもります。


続いて、ムック本の編集長を務めた株式会社角川アスキー総合研究所の井上裕信氏が登壇。本の制作を通して実感したのは広島の多様性、と話します。「海、島、山、川、都市、中山間地域……とにかく広島は多様です。それだけ課題も多様です。それらは一つの組織だけでは解決できないため、皆で協力する共創の姿勢が欠かせません。叡啓大学はそのハブとして、一つのモデルケースになると感じました」


パネルディスカッション第1部
未来はなぜ広島から生まれるのか―次世代の変革者たちの挑戦―
イベントのメインは、広島で活躍する登壇者の皆さんによるパネルディスカッションです。第1部と第2部に分かれ、第1部では次代を担う変革者たちにスポットを当てます。
登壇者の多くは広島出身。いったんは進学などで広島を離れるものの、Uターンして起業したり、家業を継いだりというケースが見られます。

瀬戸内の魅力発信と課題解決に取り組む株式会社DoTS(ドッツ)の谷口千春社長は、「広島は人との距離が近いのが魅力で、応援文化があります」と広島で挑戦する理由について語ります。
「若いころは早く広島を出たいと思っていましたが、帰ってくると大事な場所だとわかりました」とは、牛乳や乳製品のメーカー・砂谷株式会社の久保宏輔副社長。県外に出ることで地元への愛着が深まった、と笑顔を見せます。


世界を旅して回った経験を持つ特定非営利活動法人PEACE CULTURE VILLAGEの住岡健太専務理事は、「これまで広島の名を知らない人に出会ったことがありません。世界中から多くの人が訪れる広島だからこそできることがあると思います」と目を輝かせます。
「毛利元就が礎を築いた広島は、いつの時代もエネルギーにあふれています」と歴史好きな一面をのぞかせるのは、XR(クロスリアリティ)事業を手がける株式会社ビーライズの波多間俊之CEOです。


その元就の孫・輝元によってデルタ地帯に城下町が形成された広島は、今でも美しい水辺空間が広がる水の都。水上交通インフラの整備に力を入れる株式会社エイトノットの木村裕人CEOは、「広島は全国でも有人離島が多く、技術開発や社会実装に最適な条件が整っています」と話します。


それぞれ事業内容は違っても、広島は挑戦しがいのあるまちであるという認識は皆さん一緒です。どんな未来にしていきたいかという問いには、「過去を大事にしながら、未来を創造する人が活躍できるようなまちにしたい」(谷口氏)/「豊かな都市には豊かな周縁が必要。その一つに寄与したい」(久保氏)/「勇気をもらえる希望のまちというメッセージを発信したい」(住岡氏)/「ものづくり2.0のように、製造業を活性化させていきたい」(波多間氏)/「広島で社会実装した水上自動運転技術を、ゆくゆくは世界に持っていきたい」(木村氏)と多様な回答。
変革者たちの挑戦は続きます。
パネルディスカッション第2部
未来はなぜ広島で育つのか―共創が育む地域の力―
ここでメンバーが変わり、パネルディスカッションは第2部へ。共創をテーマに、地域の力について考えます。

「ものづくりに代表される産業がどれだけ元気かは、重要な要素です。それでこそ面白い人が集まってきます」と話すのは、スポーツ、自動車、医療・福祉分野にと事業を展開する株式会社モルテンの民秋清史社長。生活基盤がしっかりしていることがまずは大事、という事業家としての見識を示します。
「そういう意味では、広島はいろいろなことにチャレンジしている人たちが多い、熱量のあるまちだと思います。その横のつながりや接点をどう作るか、仕組みづくりが大切になってきます」とは、株式会社サンフレッチェ広島の久保雅義社長。プロサッカーの運営を通して、若い人たちとかかわる機会が多いからこその実感です。


「広島は産業、スポーツ、観光など、ポテンシャルの大きなまち。それらを生かすためには、個々の力をまとめ、連携することで新たな価値を生み出していかなければなりません」と、ひろぎんホールディングスの部谷俊雄会長も次世代の夢を支える重要性を説きます。
これらの発言に大きくうなずいたうえで、横田美香広島県知事は、「チャレンジする人を周りが面白がる、そういう気持ちというか土壌づくりも必要ではないでしょうか。広島にはその土壌がある。そしてそれを見えるようにしていくのも大事だ、と考えています」と力をこめます。


リーダーとして未来を見据えている皆さんに、10年後の広島と日本をどう思い描いているかも聞きました。「日本をもう一度ハードウェア大国に、というような思いがあります。ハードウェア産業は、ソフトウェア、AIなどいろいろなものを内包できます」(民秋社長)/「AIと上手に付き合っていきながらも、最終的にものをいうのは人です。広島の発展には人づくりが欠かせないでしょう」(久保社長)/「これまでリスクは極力排除されてきましたが、これからはいかにリスクを軽減しながら新しい産業を育てていくかがカギになります。既存の組織も変わっていく必要があります」(部谷会長)/「大都市は大都市だけでは成立しません。今後、地方の役割はますます大きくなっていきます。地方は最先端のコミュニティであり、異なるものが集まり、創造性が発揮されることで、新たなものが生み出されます。そういう国のかたちであってほしいという願いとともに、皆さん一緒に広島を最先端のまちにしていきましょう」(横田県知事)


人と人をつなぐプラットホームとして機能する、叡啓大学ソーシャルデザインセンター
パネルディスカッションの後は、クロージング・フォトセッションを経て、交流会を設けました。ざっくばらんな雰囲気の中、参加者の皆さんが名刺交換をしたり、和やかに談笑したりするシーンがそこかしこに見られました。




こうした出会いの場が物語るように、叡啓大学ソーシャルデザインセンターは人と人をつなぐプラットホームとして機能しています。
興味を持った方は、今回出版されたムック本をご一読いただければ幸いです。また叡啓大学の活動に興味がある、学生や教員とチームを組んでプロジェクトに取り組んでみたい、という企業・団体の方は、ぜひ気軽にお問い合わせください。