2026年7月に叡啓大学AI・データサイエンス実践講座「県内事例から学ぶDX推進の勘所」を開催しました。本講座では、各回にゲストをお招きし、広島県内におけるAI・データサイエンス導入の事例から、様々な困難を乗り越えてDXを推進するための考え方を学びました。また、グループ討議を通じて、DX推進を「自分ごと」として考えました。
第1回 DX推進の機会と困難 2026年7月1日
第1回は本学の内平直志客員教授からDXの最新動向とDX推進における機会と困難の紹介がありました。
中小企業のDXの取組は、費用負担、デジタル人材不足、AIリスクマネジメントの困難性などを理由として、十分に進んでおらず、DXへの投資対効果が明確に示せず経営判断ができないことも多いとのことです。
この中で、中堅・中小企業のDX推進の成功要因を踏まえて石川県、東京都、愛知県の企業の実際の事例の紹介がありました。経営者層の理解を深めるために経営者層がDX研修に参加した事例、ITの専門家でない現場の人材主導でDXに取り組んだ事例、生産状況の可視化などでウェルビーイング(Well-being)を向上させた例などがありました。
講座の後半では「各企業のDXに関する取組」「各企業のDX推進で困難に感じていること」などについて、親和図法を使い、個人で考えを付箋にまとめた後、本学の河村勉教授、森俊樹教授のファシリテーションによるグループ討議で情報を整理しました。



第2回 行政機関におけるAIによる業務効率化 2026年7月2日


第2回では広島県広島AIラボの江盛 翔太 氏、大島 風雅 氏をゲストにお迎えしました。江盛氏からは、AIを活用した県庁業務プロセスの見直しについて、大島氏からは現場の状況に応じたAI手法の選択と、生成AIを活用した法面画像診断の取組について紹介いただきました。
AI活用は、必ずしも専用モデル開発や大量教師データ作成から始める必要はないこと、既存資料、既存データ、汎用生成AIを使った小さな試行から始めることができること、生成AIは、叩き台作成、要約、分類、比較、候補抽出、スクリーニングなどに有効である一方、法令・安全・品質・責任を伴う最終判断は人が担う必要があることなどの学びを得ました。
受講者の皆様にとって、自社・自組織の環境を振り返る機会となったようで、セクショナリズムの中でのDX推進方法、実際にAI活用に必要となる時間など、積極的な質問が寄せられました。
講座の後半では、「自社・自組織でAIが支援できそうな業務」「現場負担を増やさないAI活用」をテーマにグループ討議を行いました。自社・自組織の規模なども踏まえた上で、「新しい業務を増やさず小さい規模でAI導入を始める」ことがAI導入への抵抗感を減らす方法として挙げられました。


第3回 製造業におけるAI活用のリアル 2026年7月9日


第3回では株式会社キーレックス・ワイテック・インターナショナル(YKI)から若林 智彰 氏をお迎えし、YKI社で実際に取り組まれているAI活用の成功事例とAI導入・定着の具体的な課題をご紹介いただきました。YKI社では間接業務(翻訳、議事録自動作成、資料作成補助等)、製造現場、作業支援といった領域でAI活用を進められています。特に製造現場の不良検出や目視検査の補助など、品質の安定化に関わる部分をAIに任せるためには、どの業務をAIに任せ、どこからを人が担うのかを判断する必要があったとのことでした。
AI導入の最大の壁のひとつは組織の失敗を許容しない文化です。AIの見落としによって損失が発生したときの責任の所在、情報漏洩のリスク、人材不足の課題にどのように対応してきたかについてお話しいただきました。
また、AIは導入より定着が難しく、継続的な取組が必要となります。AIの出力で「答えらしきもの」が得られ、人間の思考プロセスが省略されることで、人材育成の難易度が上がるとの問題提起がありました。人の価値を高めるAIの使い方について考えるきっかけになりました。
第3回のグループ演習では、仮想的な企業・組織を想定してAIの利用イメージを考えた後、KPT(Keep・Problem・Try)の考え方に沿って、期待効果、リスク、実施可能な施策を議論しました。
第4回 データを活用した製造業のサービス事業 2026年7月17日


第4回では株式会社サタケから池田 信義 氏をお迎えし、お米に関連する機械製造業のサタケが取り組んでいるデータを活用したサービス事業「KOMECT」をご紹介いただきました。KOMECTの導入により、顧客が収穫・乾燥調製後のデータを速やかに確認できるようになり、集計に長時間を要していた従来と比べ、データから気づきを得やすくなったとのことでした。
実際に新しい顧客価値を提供する「攻めのDX」を始めた際に直面した課題や、社内での様々な意見への対応、DX成功を支えた社長の強力なリーダーシップについて、実体験を交えてお話しいただきました。DXを進める際に大切だったことのひとつとしてチャレンジ精神が挙げられており、まずやってみることが大切であるとのことでした。攻めのDXをスムーズに進めることができる現場は少なく、受講者の皆様からもチャレンジ精神を持ち続けるモチベーションなどについて質問が出ました。
本公開講座の最後の回のグループワークでは、集大成として、受講者の皆様の企業・組織の「製品」を題材に、AI・データサイエンスを活用した新しい顧客価値の創造(攻めのDX)を考えました。
叡啓大学社会人教育プログラム
叡啓大学では社会人が変化の激しい社会において継続的な学び直しを行うことができるよう、社会人教育プログラムを実施しています。このAI・データサイエンス実践講座は社会人教育プログラムの一環として開催されました。
令和9年度からは公開講座の開講のほか、科目等履修生の受入など、より拡大した形で社会人教育プログラムを実施する予定です。
令和8年度の公開講座の詳細はこちらからご確認ください。