日時等 |
令和5年7月7日(金曜日)17:10~18:50 |
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対象 |
叡啓大学の学生、教職員並びに学外の方 |
講演タイトル |
DESIGN SCIENCE |
講師 |
デザイナー 深澤 直人 様 【叡啓大学客員教授】 |

深澤様は、高校3年生の時に「モノを通じて人を幸せにする仕事」のデザイナーになろうと決心し、時計メーカーに入社されました。その後、世界での経験が必要だと感じ、カリフォルニアで電子機器を中心としたプロダクトデザイナーとして活躍され、より広い世界を知ると同時に、外から見て日本をよく分かるようになったそうです。そして、自己表現がデザイナーの使命だという考えから、「人と自然に分かち合っている概念を『美学』として共有しよう」という目標に変えられたとのことです。
帰国後はヨーロッパとの仕事を考え独立。現在は世界的に有名なブランド70社と契約されているとのこと。「ヨーロッパ諸国の方と仕事をすると、彼らの生活の平和観がよく分かるようになるが、これは経済的に生活の質を上げるということではなく、経済でなくとも生活の質を上げられる、それを誰がやるのかというとデザイナーしかいない」と熱く語られました。人は歩いている時に床を感じてはいるが自覚していないように、人間が自覚していない当たり前の共通したセンサーに価値があることに気付いた深澤様は、「人間の心に刺激を与える」というデザインの概念を捨て、「人間が自ら気付いていない時に感じていることに焦点を当てよう」ということを考え、今では「無意識の中に潜む共通の心=センサーを考えている人」と称されるようになったとのことです。


木の椅子はデザイナーの生涯を決める一品と言われます。深澤様は、優秀な家具メーカーである(株)マルニ木工様と組み、「HIROSHIMA」という椅子を完成させます。世界中に知られているHIROSHIMAという名前と、この名前から平和の香りが連想され、無意識に世界中の人が共通に思う記号との思いから名付けられました。
2023年のG7広島サミットでは、HIROSHIMAの椅子が使われ、岸田首相とバイデン大統領が振り向いたところに、アームのカーブがぴったりと合ったベストショットがニュースになりました。「平和を願う椅子」として掲載した新聞もあったそうです。

深澤様は、「意識が高まり生活の質を上げようと誰もが主体的に、能動的に動けば、社会はゆっくりと向きを変えるのではないだろうか。大きな船が小さなスイッチでゆっくりと向きを変えるように。デザインはその小さなスイッチのようなものであり、世界を好転させる力がある。例えば、たった一つの椅子にHIROSHIMAという名前をつけるだけで、巨大なプラットフォームになるということを考えるのがデザインであり、そういう視点に立つと、科学の力も同じではないか」と述べられました。この他にも「美しく生きることに対して無頓着にならないでください」「頭のいい、いい人になる」「安心安全より、危機に瞬時に対応できること」等参加者へのメッセージを頂きました。

講演が終了した後も、多くの学生が深澤様の周りに集まり、それぞれがたくさんの感想や質問を寄せていました。深澤様は一人一人に丁寧に応じられ、和気あいあいとした雰囲気でした。
深澤様、ありがとうございました。
