考えて、演じて、考える「コミュニケーションに向き合う」ワークショップ
2024年2月10日(土曜日)、芸術文化観光専門職大学学長の平田オリザ先生を講師にお招きして、演劇的な手法を採り入れた「コミュニケーションに向き合う」ワークショップを開催しました。
本学の必修科目である「デザイン思考・システム思考」の特別ワークショップとして、学生・教職員等15名が参加しました。

今回、平田先生には、「デザイン思考」に焦点をあてたワークショップを実施いただきました。
デザイン思考でまず取り組むのは、「共感、エンパシー(empathy)」フェーズとなります。
この共感フェーズにおいては、コミュニケーションの力が大切といわれており、特定した課題に関わる人たちが、その課題について、どのような経験をしているか、どのように考えているかなどの聞取り(インタビュー)を行います。聞取りを通して、その人たち独自の経験や考えがあることを尊重します。
聞取りをする、聞取り結果について考える、想像するなどを含めてのコミュニケーションが重要な役割を果たすため、今回は、「コミュニケーションとは何か」「コミュニケーションの力とは何か」、演劇的な手法を採り入れたワークで考えていきました。
「コミュニケーションとは何か」「コミュニケーションの力とは何か」
まずは、好きな果物や行ってみたい国など、声を出しながら仲間を探すゲームからスタート。今回の参加者たちは、すぐに打ち解けた様子でしたが、例えば、好きな果物を言い出せない参加者がいた場合に、その参加者が発言するきっかけをどう作るか、ワークショップをファシリテートする側の「言葉」の使い方、コミュニケーションの取り方を考えていきました。
また、ペアで背中合わせのまま立ち上がるなどのワークで、各々がもつ身体の動きのイメージをお互いが言葉を用いてすり合わせ、成功させていくフローを体験しました。


休憩後、配付されたカードに書かれた数字を元にお題からイメージした物の大きさを伝え合って、自分と近い数字と思われるペアを作るゲームで、コミュニケーションを取る相手の「つもり」(基準)を探っていきました。相手がどんなつもり(基準)でその言葉を使っているのか、文脈も含めて理解していく作業が必要となります。



さらには、縄を用いない長縄跳びのワークでは、回し手も跳ぶ側も、まるで縄があるかのように動きがそろい、見学している側にも「ひっかからないかな、大丈夫かな」という緊張感がありました。これは参加者の多くが長縄跳びを経験したことがあり、歴史や文化など育ったバックグラウンドが類似していることでかなった、イメージの共有があるからということに気づきました。
シンパシーからエンパシー(共感)へ
最後に、「知らない人に話しかけるかどうか」という質問から、異文化間でのコミュニケーションについて考えました。単一の価値観では、自国の文化やマナーを押しつけがちです。グローバル化が進む中で、多様な価値観で異文化を楽しめるよう、若いうちに友情や好奇心を育んでほしいとメッセージをいただきました。
また、これは、異文化コミュニケーションに限ったことではなく、日常においても、コミュニケーションが取りにくいのは個人の問題ではなく環境の問題ととらえ、コミュニケーションが取りやすい関係や場をデザインしていけるように、相手の言葉のコンテクスト(文脈)を受け止めて、理解し、共感しながら返すようにしてみようと締めくくられました。


参加した学生は、「相手を理解して、共感しながらコミュニケーションを取る大切さを学んだ。今までにないワークショップだった。」と、充実感に満ちた笑顔で話していました。
平田先生、ありがとうございました。