広島県公立大学法人 叡啓大学

卒業プロジェクト事例

成毛 侑瑠樺

2021年4月入学

不登校の子ども達が平日に「おでかけ」できる日常をつくる平日日中のおでかけサイトの挑戦

私は小学3年生から中学生まで不登校で、周りからの何気ない言葉や「学校には行くべきだ」という空気を、ずっと負い目として抱えていました。そうした経験から高校生のときには、不登校生・ご家族・教職員向けのイベントを企画し、プロジェクトを続けてきました。

私が卒業プロジェクトで向き合っているのは、不登校の子ども達や親御さんが直面する「行ける場所のなさ」です。社会や大人は「不登校でもいい」「居場所はある」と言います。しかし、実際に不登校になった後に、どこで、誰と、何をするのか、そんな具体的な選択肢が社会にほぼないことはあまり知られていません。その結果、多くの子どもが平日を家の中で過ごし、自分を責めながら社会から孤立していく。そんな現実を、私は変えたいと考えています。

文献調査や当事者・保護者・支援者へのインタビューを通じて、行ける場所のなさの構造的な要因が見えてきました。

  • 「場所」の不足: 社会システムが「未成年は平日は学校にいるもの」という前提で設計されているため、未成年が学校以外に行くことができる場所が極めて少ない。
  • 「情報」の分断: たとえ行ける場所があっても情報が届いておらず、選択肢として提示されていない、またはどのように調べていいかわからない。
  • 「心理的」な壁: 平日の外出に伴う学校への通報・補導への懸念や、周囲からの「なぜ学校にいないのか」という干渉が、当事者の負い目を強化し、外出を躊躇させる壁となっている。

加えて、インタビューで印象的だったのは、当事者の「特別扱いせず、普通に接してくれる人・場所がいい」という声です。「不登校だから行く場所」ではなく、多様な場所が求められていました。

そこで私が立てた解決策が、不登校生向けの「おでかけサイト」を中核とする「平日日中のおでかけサイト構想」です。

このサイトでは、図書館・カフェ・美術館・児童館・大学キャンパスなど様々な場を可視化します。 実は誰でも利用できるのに、これまで「平日日中に子ども達が行くことができる」とは知られていなかった場所です。単に住所や営業時間を載せるだけでなく、予約の有無、Wi-Fiや電源、「学校は?」と聞かれやすさを星で示す、口コミなど、リアルな情報も見えるようにする設計を考えました。

また、不登校の文脈を前面に出しすぎないことも大切にしています。サイト上では「不登校の子のための場所」という表現はせず、「気軽にいける場所」「誰かのおすすめのおでかけ先・過ごし方」を軸に紹介することで、「一人の人」として出かけられるようにしたいと考えました。

卒業後も継続して運営していくために、同じビジョンを共有できるNPO法人教育の環との協働体制も整えました。

複数のプロトタイプを不登校生・保護者・支援者に共有した際には、「こんなサイトがほしかった」「お出かけ先を挙げるのが難しく、だからこそこういう仕組みが必要だと感じた」といった反応が多く、場所の情報が可視化されることの価値を改めて実感しました。また、「親や支援者向けじゃなくて若者に向けてお出かけサイトを作っているのがいい」といった声があがり、中立的なデザインが、気軽な利用につながることも確認できました。

さらに、サイト制作の資金調達、応援者集めを兼ねて実施したクラウドファンディングでは、開始1週間で目標金額の100万円を達成。最終的に、226万円に到達し、235名の方から支援が集まりました。「当時の自分に届けたかった」「このサイトがあれば救われる親子が増えると思う」といったメッセージを読みながら、これまで社会から周縁化されてきた課題に、ようやくスポットライトがあたり始めたのだと感じました。

2025年11月12日に開催された卒業プロジェクト第2回報告会では、株式会社DoTS コミュニティマネージャー 新家 美穂様、および広島女学院大学 準教授 ロバート ドーマー様からフィードバックをいただきました。新家様からは、「ポータルサイトをローンチした後に、新たにチャレンジしたいことやイメージしていることはあるか」という、サイト公開後の展開についてご質問をいただきました。 これに対し、私は「このポータルサイトに共感してもらえる場所を集めていきたい」とお答えしました。サイトを作って終わりではなく、共感の輪を広げ、実際の場所やコミュニティと繋げていくことが、次の重要なステップになると考えています。

また、ロバート ドーマー様からは、「ポータルサイト自体がとてもよくできており、素晴らしい成果だ」と、これまでの制作活動に対して非常に高い評価をいただきました。 こだわって作り上げた成果物を認めていただけたことは自信になり、今後の活動への大きな励みになりました。

プロジェクトを通して、私自身も大きく成長したと感じています。長期のプロジェクトを回しながら、いつ・誰と・何を決めるのかを考え続ける中で、計画づくりやチームでの合意形成の力が鍛えられました。

卒業後も、平日日中のおでかけサイト構想は続いていきます。子どもたちが「外に出てもいい」「ここにいてもいい」と感じられる場を増やし、学校に行っても行かなくてもおでかけできる社会をつくることが、私のこれからの目標です。