卒業プロジェクト事例
妹尾 実季
2022年4月入学
アマチュアボクシングとジェンダー 自身の経験から見る男女平等


私は小学6年生から高校3年生までアマチュアボクシングを続ける中で、男性と女性の扱われ方の違いに疑問を抱いていました。叡啓大学に入学した理由も、ジェンダー問題について取り組みたいという思いがあったからです。卒業プロジェクトのテーマを決めるにあたって、自分が続けてきたスポーツとジェンダー問題に改めて焦点を当てることにしました。
アマチュアボクシングでは、男性高校生選手は通称で「高校生」と呼ばれるのに対し、同じ高校生である女子は「女子」と呼ばれます。リングに上がるまでの動線や更衣の環境も、男子を標準としてつくられています。
ルール面でも差があります。成年男子はヘッドギアを着用しない一方で、成年女子はヘッドギアを着用します。また、女子選手は胸部を守るチェストガードを着用します。安全面への配慮とも言えますが、私はこれを慈悲的性差別と捉えることもできると考えました。
こうした経験から、アマチュアボクシングにおけるジェンダー平等のあり方について考えることを卒業プロジェクトの目的としました。



この問いを検証するために、オートエスノグラフィーとフィールドワークに力を入れました。
オートエスノグラフィーでは、自分自身のボクシング生活をデータとして扱い、練習・大会・合宿でのルーティンを細かく振り返りながら、「どの場面で性別を意識していたのか」「どんな工夫をしていたのか」を改めて言語化しました。
また、日本とガーナでのフィールドワークも行いました。ガーナを選んだのは、ボクシングがメジャースポーツであることと、私がもともとアフリカに興味があることが理由です。ガーナでは首都アクラのボクシングジムをまわり、女子ナショナルチームや連盟会長を取材しました。
フィールドワークで意識したのは、テーマに関係がなさそうなことでも徹底的にメモを取ることです。街の建物、選手の服装、会話、見学している人の様子など、一つひとつを記録していくうちに、ボクシングジムの空間構造や、地域の人々から見たボクシングの位置づけが浮かび上がってきました。このメモを取る手法は、国外でのフィールドワーク経験が豊富な田口先生から教えていただきました。
日本国内では、インターハイ会場やジム、高校のボクシング部を訪ね、観察とインタビューを行いました。
調査を重ねる中で私が大事にしたいと考えたのは、「女子の不利さ」だけに着目するのではなく、男子も含めて、誰がどのようなルールや言葉によって制限されているのかを見直すことです。その過程で男子選手の声もきちんと位置づけることが、ジェンダー平等に近づく一歩だと考えています。


2025年11月11日開催の卒業プロジェクト第2回報告会では、外部評価委員の廿日市市 産業部観光課 空 正夫様、デジタルソリューション株式会社 蒲原 龍一様からフィードバックをいただきました。
空様からは「ヘッドギアの着用ルールについてどうあるべきだと思うか、あなた自身の考えを聞かせてほしい」というコメントをいただきました。私は、女子の安全面への配慮は、必ずしも女子選手のエンパワーメントにつながっていない可能性があること、同時に、過去の死亡事故を踏まえれば、男子にも配慮が必要ではないかというジレンマについてお話しました。
また、プロボクシングとの違いについても質問を受けた上で、プロボクシングや他のスポーツでのジェンダー意識について分析することで、アマチュアボクシング界での課題がより明確になるというご指摘もいただきました。
蒲原様からも、「プロ/アマ」「男女」「日本とガーナ」といった二軸からさらに発展して、他のスポーツや他国との比較をすることで見え方が変わってくるのでは、というアドバイスをいただきました。
卒業プロジェクトは、私自身の生き方にも変化をもたらしました。もともと人見知りだった私が、ガーナでのフィールドワークを通して、英語で電話をかけ、現地の人に助けを求め、初対面の人にインタビューができました。帰国後も、困っている外国人に声をかけたり、アルバイト先でお客さんと会話を広げたりする自分に気づき、「私って、意外と動けるんだ」と思えるようになりました。
「こうすればジェンダー平等が実現する」という結論を簡単に出すことはできませんが、卒業後も、スポーツとジェンダーの問題に関わり続けたいという思いは変わりません。男性優位とされてきたスポーツの現場で、女子選手をエンパワーメントできる取り組みに携わっていきたいです。