広島県公立大学法人 叡啓大学

卒業プロジェクト事例

濱岡 千咲

2022年4月入学

小学生の「私の大学」という第三の居場所 その継続に向けた取組

私は、3年生の春から運営に関わってきた学童保育プログラム「おいでよ!のぼりっこ!」での経験を、卒業プロジェクトの取組テーマとしました。 

「おいでよ!のぼりっこ!」は、地域の小学生を叡啓大学に招き、大学生と一緒に遊んだり学んだりする学童保育プログラムです。活動を続ける中で、保護者の方から「内容にはとても満足しているので、続けてくれることが一番ありがたい」という声を何度もいただきました。一方で、プログラムに関わる学生の人数が不足しており、今のままでは継続が難しくなる可能性があるという悩みも深刻になっていました。 

そこで私は、卒業プロジェクトの課題として「のぼりっこ」プログラムが提供する価値を改めて整理し、保護者と大学生の双方にとって「続けたい」と思える仕組みを検討することにしました。 

卒業プロジェクトでは、まず、「のぼりっこ」のリピーターである保護者にインタビューを行いました。このインタビューから、11個の「提供価値」を抽出し、それらをもとに、「のぼりっこ」と同じような特長を持つ2つの学童保育との比較を行いました。 

その中でも特に印象的だったのは、大学生が関わる「のぼりっこ」ならではの強みである、「小学生の私の大学」という価値を提供している点です。 

具体的には、保護者インタビューの中で、お子さんがマンションの管理人さんに「どこに行くの?」と聞かれたときに、「私の大学」と答えたというエピソードから、この価値に気づきました。 

小学生が大学を「私の大学」、つまり「私の場所」と感じていることに、保護者の方だけでなく、私自身も驚きと喜びを覚えました。このエピソードは、大学生が大学という空間で行う学童保育が、子どもにとっての「第三の居場所」になり得ることを象徴していると感じました。 

次に、インタビューと比較分析を通じて発見した「のぼりっこ」の提供価値をどのように伝えるかに焦点をあて、解決策を考えました。 

一つ目は、小学生の参加者を増やすためのプログラム案内用チラシの改訂です。「大学という異なる世界にふれることができる」「大学が新たな居場所になる」といった価値を、保護者にしっかり届けるチラシづくりを進めています。 

二つ目は、大学生ボランティアの増員に向けた解決策です。ここでは、バックキャスティング法を用いて、1年後から50年後までのプログラムの理想像と参加する学生の未来像を描きました。「のぼりっこ」でのボランティアに参加することで、学生自身がどのような将来像を描けるかを伝えることで、長期的に関わってくれる仲間を増やしていきたいと考えています。 

2025年11月11日に開催された卒業プロジェクト第2回報告会では、外部コメンテーターの写真家の樋口 謹行様、有限責任監査法人トーマツ シニアマネージャー ・公認会計士 清老 伸一郎様からフィードバックをいただきました。 

清老様からは、「未来像の中に子どもの姿があまり見えなかった」という指摘をいただきました。確かに、バックキャスティングで描いた未来像は、大学生の目線から見た「活動を続けるためにどうするか」に偏っていて、「子どもにとって、この場がどうなっていってほしいか」という視点が十分ではありませんでした。また、「サービスを受ける人、つまり子どもたちが増えることで、サービスを提供する人も増えていくのでは」というビジネスの視点からのアドバイスもいただきました。これらの貴重なアドバイスを踏まえ、子どもたちにとってのメリットをより明確に打ち出していけるよう検討したいと考えています。 

また、大学生ボランティアのリクルートの方法について質問した際、樋口様から「活性化しているコミュニティでは、中の人たちが楽しんでいる姿や、参加するメリットがしっかりと見えて、伝わっていることが重要である」という助言をいただきました。この助言をさっそく解決策に取入れて実践に活かし、先日、興味を持ってくれた学生を対象にランチ座談会を開催しました。活動の楽しさを生の声として直接伝えることができ、手応えを感じました。 

卒業プロジェクトを通して、これまであまり話す機会のなかった保護者の方と対話を重ねる機会が多くありました。その中で、今の子育てのリアルや大学生に期待していることを直接聞くことができました。保護者の方から「大学生ともっと話してみたかった」という言葉をいただき、私たちが提供している場は、世代間をつなぐ対話の場でもあるのだと気づくことができました。 

将来、社会人になっても「のぼりっこ」に関わり続けたいと考えています。そして、いつか自分自身が子育てをする立場になったときには、このプロジェクトを通して得た保護者や子どもの声を思い出しながら、自分なりの子育てを実践していきたいです。