広島県公立大学法人 叡啓大学

卒業プロジェクト

米原 真奈

2022年4月入学

ネパールの教育現場で インクルーシブ教育の課題と可能性を実感 

私は、ネパールのインクルーシブ教育をテーマに卒業プロジェクトに取り組んでいます。 

15歳の頃からネパールと国際協力の世界に興味を持ち、大学2年生のときには体験・実践プログラムで首都カトマンズでの海外ボランティアを行いました。 

また、私は全盲の祖父と暮らしてきた経験があり、視覚障がいの当事者家族です。祖父は盲学校の教師として働いており、「祖父は教師になれたが、途上国の視覚障がいのある人はどうしているのか?」という問いが、卒業プロジェクトの課題の出発点になりました。 

ネパールでは、視覚障がいのある子どもたちが十分に教育にアクセスできていないと言われています。資料や先行研究を読む中で、その背景には大きく三つの要因があるのではないかと仮説を立てました。一つ目は、社会の偏見や差別。二つ目は、物理的・制度的な問題。三つ目は、当事者家族が教育や支援についての情報にアクセスしづらい状況です。 

この仮説を確かめるために、2025年8月から2か月間、ネパールでフィールドワークを行いました。言葉の壁にぶち当たったり、デモを目の当たりにしたりと、現地ならではの苦労がたくさんありましたが、現地の盲人協会(NAB)の協力を得て多くの気づきを得られました。 

視覚障がい学生が通学できる学校は限られていますが、それらの学校を観察して見えてきたのは、まず年齢と学年が合っていない生徒が多いことです。点字の習得に時間がかかることや、インクルーシブ教育を行う学校が限られていることから、学習のスタートが遅れてしまうケースが目立ちました。また、点字教材は政府発行の教科書のみで、健常児と比べて授業外での学びの機会に大きな差が生まれていること、学校間で教育の質にも差があることが分かりました。 

インタビュー調査では、視覚障がいのある生徒、その家族、教員の声を集めました。ここでは、日本人学生である私がインタビューを行うにあたって、どのように声をかければ打ち解けられるか、その人の気持ちを読み取るにはどのような質問をしたらよいかを丁寧に考えました。 

生徒たちからはさまざまな困難が挙げられた一方で、「学校に通えることがうれしい」と語る生徒も多く、教育が彼らの自己肯定感につながっていることも実感しました。教員へのインタビューでは、先生たちの情熱はあるのに、それを支える仕組みや研修が不足しているという課題を知りました。 

こうした気づきを踏まえ、当事者家族が教育・支援に関する情報にアクセスしやすくなったり、教員の研修が充実したりするよう、現地の盲人協会(NAB)に情報提供を行い、当事者以外の支援者を増やしていくことを、卒業プロジェクトの次のステップとしました。また、大学院でもこの研究を継続していきたいと考えています。

2025年11月11日に開催された卒業プロジェクト第2回報告会では、外部評価委員の株式会社グロウアップ 代表取締役 西前好朗様、広島県 わたしらしい生き方応援課 課長 井上弥枝様からフィードバックをいただきました。 

西前様からは「今後どのような形で支援に関わっていきたいか」という質問をいただきました。私はまず、英国の大学院(2026年9月入学予定)で国際教育開発を学び、将来的にはJICAや国際機関、NGOで教育プロジェクトに携わりたいと考えていることをお話しました。行政職として制度づくりに携わるのか、NGOの一員として現場で活動するのか、ビジネスの立場から関わるのか…さまざまな選択肢があることを改めて指摘していただきました。 

井上様からは「日本でも、バリアフリーに向けた努力がまだ不足している現状がある。そうした課題についての行政への発信にも力を入れてもらいたい」と期待の声をいただきました。 

大学で学んだ課題解決のプロセスやフィールドワークの手法、英語集中プログラムで身につけた英語力を実践に取り入れていくことは、大きな自信になりました。多文化共生や国際協力に関する科目で広い視野を身につけられことも、成長につながりました。 

また、2か月間ネパールで過ごすことで、私自身の物事への目の向け方にも変化がありました。ネパールでは、インフラが整っていない中でも幸せそうに暮らしている方がたくさんいます。その理由の一つに、ネパールの人々は、「ないもの」ではなく「今、自分の手元にあるもの」に目を向け、助け合って生きていると感じました。私はそのマインドに強く影響を受け、前向きに問題と向き合う力が身についてきたと実感しています。 

今後も大学院での学びや現地調査を通じて、途上国で障がいのある子どもたちが当たり前に教育を受けられる仕組みをつくりたい。そのために、現場で出会った人々の声を忘れずに、研究を続けていきたいです。