叡啓大学では、世界のあり方を深く学び、よりよい社会を作り上げるための思考力と実践力を育てるため、全学でアクティブ・ラーニングを取り入れていきます。
とはいえ、アクティブ・ラーニングって何なのでしょうか?
講義を聴くかわりに、グループワークやディスカッションをすることでしょうか?
ここでは、アクティブ・ラーニングの基本的な考え方をご紹介します。
アクティブ・ラーニングは、1980年代の米国の大学などで、それまで主流になっていた講義形式への批判として出てきた考え方です。具体的には、一人の教員が大教室で大勢の学生に向けて一方的に科目の内容を説明し、学生は講義を聴くことで知識を身につけるという形式に対して、学生がより能動的に学習に参加できるようにする方法がまとめて「アクティブ・ラーニング」と呼ばれるようになりました。
日本でも「アクティブ・ラーニング」は2010年代に政府の教育改革のキーワードとなり、近年では「主体的・対話的で深い学び」とも言い換えられています。
新しい授業のかたち?
このように、従来の大学講義という形式に対する批判が出発点であったため、別の形式に注目が集まりました。「受動的(パッシブ)」に情報やアイデアを受け取る講義ではなく、プレゼンテーションやディスカッションなどを通して、学生自らが「能動的(アクティブ)」に経験や振り返りを行うことが大事だ、と考えられるようになったのです。

かたちから中身へ
しかし、より近年では、新しい授業形態のみが注目されることによって、中身が置き去りになっているのではないか、という指摘もなされています。
実際、学生のアクティブな学びを重視するというのなら、注意深くメモを取りながら講義を聴いたり読書をすることも、とてもアクティブな行為です。その一方で、ディスカッションでなんとなくスマートな発言をしたり、プレゼンスキルを修得しても、その場で求められているタスクをこなすだけで、アクティブに学べていないこともあるはずです。
アクティブ・ラーニングをめぐる近年の議論では、学びの形態よりも学びの質や知識の結びつけ方を重視する「ディープ・アクティブラーニング」(松下 2015)や、アクティブ・ラーニングの全体をとらえるホリスティックな視点(Fink 2013)が重要だと考えられているのです。

このように、深い学びの全体像をとらえようとすると、最初の図では「受動的(パッシブ)」のほうに追いやられていた「情報やアイデアを受け取る」という要素も、アクティブ・ラーニングの一部として組み込まれることになります。
したがって、叡啓大学のアクティブ・ラーニング・ガイドラインでは、すべての授業で、1)主体的な情報の獲得、2)学生主体のアクティビティ(経験)、3)振り返りや評価等のリフレクション、の3要素を組み込むことを定めています。
ディスカッションやプレゼンテーションは、学生が実際に行うアクティビティ(経験)(2)として重要な部分ですが、それだけでは深い学びにはつながりません。講義や教科書、その他の資料から情報やアイデアを受け取ること(1)、そしてアクティビティを自分自身で振り返ったり仲間と一緒に議論したり評価すること(3)を通して、知識や思考力や実践力を高めていくことができるのです。
アクティブ・ラーニングとコンピテンシー
叡啓大学では、アクティブ・ラーニングを通して、卒業までに学生が5つのコンピテンシー(先見性、戦略性、グローバル・コラボレーション力、実行力、自己研鑽力)を身につけることを目指しています。
知識や情報を一つの専門領域のなかで修得するだけではなく、自らの経験に位置づけたり、別の角度や複数の次元から振り返ったりするというアクティブ・ラーニングは、大学で学んだことを、ビジネスや市民社会や私生活 などさまざまな領域に翻訳しながら実践していくコンピテンシーの育成にもつながっていくでしょう。
アクティブ・ラーニングもコンピテンシーの獲得も、一人ではできません。仲間や教師や地域社会、さらにはさまざまな道具や機械や環境を含めた共同での取り組みが必要になります。叡啓大学では、多様なコラボレーションを通して、叡啓らしいアクティブ・ラーニングのかたちを作り上げていきたいと考えています。
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参考文献
教育課程研究会(編) 2016『「アクティブ・ラーニング」を考える』東洋館出版社
松下佳代・京都大学高等教育研究開発推進センター(編)2015『ディープ・アクティブラーニング:大学授業を深化させるために』勁草書房
松下佳代 2017「深い学びにおける知識とスキル:教科固有性と汎用性に焦点をあてて」『教育目標・評価学会紀要』17:1-10
松村圭一郎 2019『これからの大学』春秋社
Fink, L. D. 2013. Creating Significant Learning Experiences: An Integrated Approach to Designing College Courses. Jossey-Bass