広島県公立大学法人 叡啓大学

大学案内

卒業生

木村侑平さん 

株式会社水都広島 代表取締役 2025年3月卒業

2025年12月更新

社会で問いを設定して答えを自ら探究!


ソーシャルシステムデザインの方法論を強みに広島で起業して活躍する叡啓大学1期卒業生の挑戦

社会の仕組み(ソーシャルシステム)をデザインし、より良い未来の実現を目指す―。そうした考えのもと、2021年4月に開学した叡啓大学。

「ソーシャルシステムデザイン学部ソーシャルシステムデザイン学科」の1学部1学科で、アクティブ・ラーニングを重視した少人数教育により、社会の課題を発見し、新たな価値をデザインできる人材を育成しています。

ソーシャルシステムデザインとは、社会で問いを設定し、解答を自ら研究するための方法論です。社会の仕組みを俯瞰し本質的課題を見抜く「システム思考」と、ありたい未来の企画・立案力や、それを実践できる力「デザイン思考」で、イノベーションを起こす総合的な力です。「修得と実践のサイクル」を軸とした独自の教育システムにより、学生は学内だけにとどまらず、学外にも飛び出して社会と深くかかわりながら、そうした力を身につけていきます。

その結果、アントレプレナーシップ(起業家精神)が涵養され、在学中に起業した叡啓大学1期卒業生の木村侑平さん(株式会社水都広島 代表取締役社長)に、4年間を通して膨らんだ起業への思いや、事業を進めるうえで生かされている大学での学びについて聞きました。


学内外での多くの出会いが起業を後押ししてくれた

―卒業を控えた2025年3月に起業していますが、就職ではなく起業するという選択肢は最初からあったのですか?

決して最初からではなく、大学での多くの出会いを通して、徐々に「起業したい」という思いが育まれていきました。私は岩国市(山口県)出身ですが、進学で広島に来て、「水都」としての広島の魅力に出会いました。そして学内外の活動を通して、まちづくり団体の方とも出会うことができ、広島の人々の温かさに触れることで「このまちで起業したい」という思いが膨らんでいきました。

―とはいえ起業はハードルが高いようにも思いますが。

それは、叡啓大学の教職員の方たちとの出会いが大きかったです。キャリアについて柔軟に考える方が多かったので、私自身も将来を自由に設計することができました。

一緒に学ぶ仲間たちにもいろいろな国や地域の出身者がいて、多様な価値観に触れることができました。そこで「一緒に会社をやろう」という友人とも出会い、「迷うよりワクワクする方を選ぼう!」と一緒に起業しました。


ゼロから社会の仕組みをつくる面白さ

―会社を作るにあたって大切にしたことは何ですか?

「広島を盛り上げたい」ということです。広島は若者の人口流出がニュースになる一方で、インバウンドの多さが物語るように世界的には非常に知名度の高いまちです。そこで新しい切り口で広島を盛り上げられないかと考え、水上交通という視点から都市機能と自然環境が調和したまちづくりに挑戦することにしました。

具体的には通勤や通学、観光などに活用できるホバークラフトの運航を構想しています。産学官連携の取組にも参画するなどやり方を摸索していますが、近年中にプロトタイプを完成させ、運航の実現を目指しています。

―事業を実現するにあたって、大学で学んだソーシャルシステムデザインの方法論が生かされていますか?

はい。「広島のまちを水上交通でつなぐ」というのは新しい取り組みですから、ゼロから社会の仕組みをつくることになります。そのためには物事を俯瞰しながら、個々の課題をクリアしていかなければなりません。

事業計画には、資金調達や人材調達、航路構想など、さまざまなものが必要です。複数の要素を組み合わせて実現までの道筋をつけていくうえで、自ら問いを設定し、解決するにはどうすればいいかを探求していく、というソーシャルシステムデザインの方法論が生かされています。

また、当社では第二の事業としてウォーキング事業も立ち上げました。「推し活」を健康行動につなげるエンタメと科学を融合したプログラム開発事業で、広島県の支援事業に採択され、水辺空間で実証実験が始まったところです。これも先の方法論と同じく、課題(若年層の運動不足解消)を発見し、新たな価値(運動により付与されたポイントを「推し」のチームやグループに使える)をデザインしたものです。

何かをやるとき「この指とまれ」と言える人間に

―在学中には、どのような問いを設定して答えを探究しましたか?

広島の都市の魅力を探る卒業プロジェクトの一環として、「どうすれば住民が自然環境に親しめるか」さらに「どうすれば人の交流が促進できるか」という問いを立て、水辺空間をしっかり利活用するべきだと考えました。そこで、川沿いの開放的な雰囲気のなか自然と親しみながらドリンクや読書を楽しむイベント「広島アウトドアブックカフェ」を開催しました。

来場者アンケートも取り、「都市における自然環境が都市住民の定住意識を高める役割がある」という結論を得ました。そこから「広島の魅力的な川辺に人を集めたい」と考え、現在の主事業である水上交通サービスの構想へとつながっていきました。

―叡啓大学に進んだことで、未来が大きく変わったようですね。

子どものころは「ロケットエンジニアになりたい」と思っていたのですが、その夢から「広島を盛り上げる」というさらにスケールの大きな夢へと導いてくれたのが叡啓大学です。

正直、ロケットエンジニアになる人はたくさんいるでしょう。でも実際に「ロケットをつくろう」となったとき、「この指とまれ」と言える人は少ないのではないかと思います。叡啓大学が育てているのは、そういう人材です。何かを成し遂げるためにはどのような準備が必要か、といったことを考えて実行できる人間を叡啓大学は育てていると思います。