広島県公立大学法人 叡啓大学

卒業プロジェクト

木村 彩乃

2022年4月入学

大学の学食からはじめる食の多様性 ヴィーガン常設メニュー導入への挑戦 

私は卒業プロジェクトで、叡啓大学の学食にヴィーガンの常設メニューを導入することに 取り組みました。きっかけは、私自身がヴィーガンであり、大学の学食には選択肢がほぼないことから、ニーズがここにあると考えたからです。 

ヴィーガンになったのは、叡啓大学に入る前にペットショップで購入した子犬が値下げされていることから、命に値段がついていることを疑問に思い、生体販売の裏側を本で読んで知りました。そこで、「人に愛されている犬猫でさえこんな酷い扱いを受けているなら、人に食べられるためだけに生まれてくる家畜はどうなのか?」と思い、SNSで調べたところ、屠殺の映像を見ました。 

今まで何も知らずにお肉を食べていた自分と、この社会システムに強い怒りを抱き、そこから私は動物のために畜産に加担しないと決め、動物性食物を取らないヴィーガンの選択をしています。 

叡啓大学には留学生が約3割在籍し、さまざまなバックグラウンドを持つ学生が学んでいます。しかし、学食にはヴィーガンやベジタリアン、ハラールなどに対応したメニューがほとんどありませんでした。多様性を尊重する大学なのに、食の多様性が置き去りになっていることに違和感を覚えました。 

最初は「ヴィーガンのニーズは絶対ある」「だから学食に導入すべきだ」と感情のままに考えていました。しかし、学食を運営する企業に提案をする際、私が必要だと思うことと、学食提供側にとってのメリットとのギャップに気づきました。新しいメニューを導入するには、原価や調理の手間、売り上げなども考慮しなければならないことを知りました。 

そこで、学食導入に向けたステークホルダー調査として、現場(調理師さん)の視点、学生利用者の視点、メニュー市場・企業側の視点の三つを意識して情報を集めました。 

現場の調理師さんへの聞き取りでは、手間が少なく、時間がかからないメニュー、おいしさと現場の負担のバランスが課題として見えてきました。 

学生への学内アンケートからは、ヴィーガンという理由よりも、味・見た目・満足感を重視するニーズが高いことが分かりました。 

また、NPO法人や企業でのインターンを通じて、最新のプラントベース食品やヴィーガンレトルトカレーの企画に関わり、味・価格・調理のしやすさのバランスが取れた商品が増えていること、伝え方次第で受け入れられ方が大きく変わることも学びました。 

こうした調査結果を踏まえて、実現可能なヴィーガンメニューとして、大豆ミートを使ったタコライスとガパオライスを考案しました。どちらも調理がシンプルで、満足感が得られ、原価を抑えられることを意識してレシピを組み立てました。 

また、「ヴィーガン」と明記すると、ヴィーガン以外の学生が選びにくくなるのではないかと考え、あえて普通の学食メニューに見えるようにすることも意識しました。 

試作したメニューは、インターン先のつながりを活かし、女子美術大学で試食会を実施しました。9割以上の学生が「とても美味しい/美味しい」と回答し、約86.7%の学生は食べ終わるまで動物性不使用だと気づかなかったという結果になりました。 

こうした結果をもとに、現在は教学課と学食運営企業へ向けた提案資料を作成し、「現場の手間」「学生ニーズ」「原価と提供方法」の3つを踏まえた常設メニュー導入の提案に取り組んでいます。もし導入が難しい場合には、ヴィーガンレトルトカレーを購買で販売し、電子レンジで温めて食べられる“プランB”も用意するなど、柔軟な選択肢も検討しています。 

2025年11月10日に開催された卒業プロジェクト第2回報告会では、外部評価委員の「あさのひとくちめ」代表 田野実 温代様、および慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 研究員 田中様からフィードバックをいただきました。 

田野実様からは、「ヴィーガンメニューを導入している大学の調理方法を調べてみてはどうか」という具体的なご提案をいただきました。ご自身も食に関する事業に携わっている視点から、「調理の見え方の工夫が重要である」というアドバイスもいただき、メニューそのものだけでなく、提供するまでの演出や見せ方が利用者の関心を引く鍵になるのだと気づかされました。 

また、田中様からは、別の角度から「ヴィーガンメニューを導入している大学が、どのようなプロセスを経て導入に至ったか」を調査するよう助言をいただきました。「導入プロセスそのものに再現性としての価値がある」というご指摘は、単なる事例収集にとどまらず、私が実際にプロジェクトを進める上で、実現可能なモデルケースを探るための非常に重要な視点だと感じました。 

この卒業プロジェクトで一番大きかった学びは、「自分の正しさ」だけで突き進むのではなく、関わる相手の立場やメリットを考えながら提案できるようになったことです。以前は「動物のためにヴィーガンメニューを入れるべきだ」という思いが先行しがちでしたが、調査や失敗を重ねる中で、「企業にとってのメリットは何か」「調理師さんにとって現実的な手間か」「ヴィーガンではない学生にとっても魅力的なメニューか」という多角的な視点を持てるようになりました。 

私は、将来ケニアでヴィーガンレストランを開くことをめざし、現地でレストランの調査を続けています。ケニアでレストランが実現することで日本のメディアにも注目してもらい、将来的には日本での啓発活動を発展させ、子どもたちへの食育、動物の扱われ方についての教育活動をしていきたいと考えています。